TNFD提言に基づく情報開示

戦略

2026年10月6日

戦略

取り組み範囲の設定

当社グループは、自然資本に関する依存・影響・リスク・機会を評価するにあたり、まずScoping(取り組み範囲の決定)にて、評価ツール「ENCORE」※1によるスクリーニングを行い、事業活動と自然資本との接点を確認しました。
その後、TNFDが推奨する「LEAPアプローチ」※2に沿った詳細評価を実施しました。
現時点の評価スコープは、バリューチェーン(上流・下流)における位置特定やデータ収集の難易度を考慮し、確実な管理統制が可能な直接操業の「国内外の全製造および開発拠点(6拠点)」に限定しています。
なお、次年度以降は、主要な原材料調達をはじめとするサプライチェーン上流へと、段階的に評価範囲を拡大していく予定です。

※1

ENCORE(Exploring Natural Capital Opportunities,Risks and Exposure):経済活動の自然資本への依存・影響や、環境変化によって生じうる機会・リスクを可視化するツール

※2

LEAPアプローチ:リスク・機会を評価する4ステップ(Locate,Evaluate,Assess,Prepare)

依存と影響の特定結果

当社グループの直接操業(半導体製造装置の製造)を対象に自然資本への依存・影響を評価した結果、「VH(非常に高い)」または「H(高い)」に該当する依存関係や影響は存在しないことを確認しました。
一方で、「M(中程度)」の依存・影響として、操業における水資源への依存、ならびに取水(水使用)、騒音・光(環境攪乱)、水質・土壌汚染に伴う環境影響が特定されました。

VH:非常に高い H:高い M:中程度 L:低い

依存のヒートマップ

固形廃棄物の除去

土壌と堆積物の保持

水の浄化

大気・生態系希釈

洪水緩衝

水供給

微気候
の調整

嵐の緩和

水流調整

半導体製造装置の製造

L

L

M

L

M

M

L

M

M

影響のヒートマップ

攪乱
(騒音・光)

温室効果
ガス排出

大気汚染

土壌・水汚染

固形廃棄物

土地利用

水使用

半導体製造装置の製造

M

L

L

M

L

L

M

※

出典:ENCORE(2024)

評価の対象

当社グループの直接操業(製造および開発拠点)における、自然資本への重要な依存と影響について整理を行いました。

依存項目

  • 水資源(地上水・地下水):急流河川等からの良質で汚染のない水の供給(供給サービス)

  • 水循環維持および自然災害緩和:安定操業の前提となる流域の健全な水循環、および豪雨や洪水による工事敷地内の浸水被害を防ぐ自然の調整機能(調整サービス)

当社グループの半導体製造装置の製造およびプロセス評価工程では、装置の洗浄や冷却、ウェーハ洗浄、廃ガス洗浄等に良質かつ多量の水を使用しています。そのため、気候変動や外部環境の変化によって水源の枯渇や水質悪化が生じた場合、純水製造棟のための対応コスト増加や生産量の低下を招き、最悪の場合には操業停止に至るという、「環境資産の劣化」が自社の「運用コスト増・売上減少」という財務リスクにつながります。

影響項目

  • 水の使用:プロセス評価工程における多量な取水による、地域の水資源への負荷

  • 汚染(廃水、排気ガス、廃棄物):評価工程で使用される特殊ガスや化学物質材料に起因する水質、土壌汚染のリスク、および小型ボイラー稼働に伴う大気排出(NOx等)

  • 騒音:工場稼働に伴う周辺環境への騒音負荷

当社グループの半導体製造装置の製造およびプロセス評価工程における多量な取水や、特殊ガス・化学物質の使用は、適切に管理されない場合、周辺河川の「水質悪化」や「大気汚染」、ひいては「淡水・陸域生態系の悪化」を引き起こす潜在的な影響要因となり得ます。

当社グループはこの経路を遮断・緩和するため、除害設備や水スクラバー設備、廃水処理施設による適切な無害化処理を徹底しているほか、国や自治体の基準を上回る厳しい自主基準を設けた公害防止組織による定期監視を行っています。

さらに、取水影響そのものを低減するため、富山事業所では2025年に「工業用水循環システム」の更新により評価設備の使用水を浄化・再利用する体制を整え、リサイクル可能容量を従来比で約5倍に増強することで、自然への負の影響を最小化するプロセスを確立しています。

製造拠点別のリスク評価

当社グループは、TNFDのLEAPアプローチに基づき、直接操業である国内外の全製造および開発拠点(6拠点)を対象に、IBAT※3およびAqueduct※4を用いた地理的スクリーニングを実施いたしました。
分析の結果、水ストレスは総じて低い水準にとどまるものの、全ての拠点においてKBA※5から50km圏内に位置するという生態学的な重要性が確認されました。
開示の網羅性とリスク管理の確実性を担保するため、これら6拠点すべてを「優先地域」として位置づけ、依存・影響およびリスク・機会の詳細評価を実施しました。

※3

IBAT(Integrated Biodiversity Assessment Tool):IUCNレッドリスト、保護地域データ(WDPA/Protected Planet)、生物多様性上重要地域(KBA)などの地理空間データベースにアクセスできるプラットフォーム

※4

Aqueduct-Water Risk Atlas:物理(量・質)、規制、評判といった観点で地域別の水リスクを評価・可視化するツール

※5

KBA(Key Biodiversity Areas):重要生物多様性エリア 陸域、淡水域、海洋の生態系において、生物多様性の世界的な持続に著しく貢献する地域

拠点名 国 Aqueduct IBAT
全体的な水リスク 絶滅のおそれのある野生生物数 KBA
横浜テクノロジーセンタ 日本 低-中 2,374 8
砺波事業所 日本 低-中 1,205 10
上市事業所 日本 低-中 1,202 4
富山事業所 日本 低-中 1,198 9
天安工場 韓国 低-中 946 2
平澤工場 韓国 低-中 970 5

リスクと機会の評価

将来の時間軸において、TNFD例示の4象限シナリオ(生態系サービスの劣化、市場と非市場の一貫性を組み合わせ、2×2のマトリクスで4つのもっともらしいシナリオ)により発生が予想されるリスクと機会を特定しました。

検討シナリオについては、自社事業へのインパクトが大きいシナリオ(2.Go fast or go home(スピード勝負))に絞って検討しました。

参照シナリオ

TNFD例示の4象限シナリオ

1.

Ahead of the game(一歩先行する)

2.

Go fast or go home(スピード勝負)

3.

Back of the List(リストの優先順位が低い)

4.

Sand in the gears(嚙み合わない現状)

検討シナリオ

2.

Go fast or go home(スピード勝負)

分析範囲

富山事業所、砺波事業所、上市事業所、横浜テクノロジーセンタ、天安工場、平澤工場(6拠点で全グループの収益の約70%をカバーしている(2024年時点))

時間軸

短期:2030年、中期:2040年、長期:2050年

インパクトが最も大きい区分

Go fast or go home(スピード勝負)

想定される将来の状況と当社グループが受ける影響

  • 排水や汚染水、水量など水に関する法規制強化や自然生態系に対する顧客要求の高まりにより、管理コストの増加があると仮定しました。

  • 気候変動による異常気象の増加や水量、水質、水温の変化の影響について、生産活動に影響が出て納期遅延や操業停止のリスクがあると仮定しました。

  • 製造プロセスの低炭素化が推進されるため、省エネ対応の半導体製造装置の需要が高まり、ビジネス成長の機会が増大すると予想しました。

リスクと機会の特定

当社グループは、自然環境の変化が自社事業に与えるリスクと機会を把握するため、TNFDが推奨する分類枠組み(物理的リスク:急性・慢性/移行リスク:政策・法規制、市場、評判等)に準拠して特定・評価を行いました。

社内関係部署を交えた分析を通じて、相互の依存関係や影響度を総合的に評価し、重要度の高い9項目を特定しました。それぞれの対応策および財務影響(3段階評価:小・中・大)を整理した結果は以下の通りです(次表参照)。

関連するコンテンツ