気候関連の情報開示に対する基本的な考え
2025年12月1日
KOKUSAI ELECTRICグループは、脱炭素社会の実現に向けて、2021年8月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」に賛同し、2023年4月にはパリ協定で定められている「1.5℃目標」に整合したCO₂排出削減目標を設定しました。本報告では2024年10月に開示した情報をIFRS S2号に沿って見直し、改めて開示します。
ガバナンス
KOKUSAI ELECTRICグループの気候変動に対する活動は、社長執行役員を委員長として定期的に開催するサステナビリティ委員会で審議・決定し、取締役会に報告します。取締役会は、気候変動の監督に必要な知識・経験・能力を確保しており、サステナビリティ委員会からの報告に対し監督することで、そのプロセスの有効性を担保します。
KOKUSAI ELECTRICグループでは気候変動対策分科会で気候変動に関するリスクと機会を抽出し、そのリスクと機会をサステナビリティ委員会へ報告します。サステナビリティ委員会では、そのリスクと機会をその他の環境課題とともに事業継続への影響度を考慮に入れ審議します。
その結果を基にサステナビリティ委員会では、CO2排出削減目標や再生可能エネルギー導入目標のほか、SEMI半導体気候関連コンソーシアム、SBT認定取得など気候変動に関するイニシアティブへの参加等の意思決定を行っています。
今後はインターナルカーボンプライシング制度の導入やネットゼロの達成方法について審議していく予定です。サステナビリティ委員会で審議した内容は取締役会へ報告され、取締役会ではリスクと機会に関連する環境目標の内容を監督し、その活動の進捗状況を監視しています。
気候変動に対するガバナンス体制図(会社全体のガバナンス体制は統合報告書を参照)
ガバナンス体制の構成、役割
| 組織名 |
役割 |
構成メンバー |
開催頻度 |
|---|---|---|---|
| 取締役会 |
サステナビリティ委員会における審議・モニタリング内容の報告を受け、監督する。 |
代表取締役、取締役 |
月1回 |
| 経営会議 |
重要なサステナビリティ、ESG議題について審議する。 |
社長執行役員、執行役員 |
月2回 |
| サステナビリティ委員会 |
以下の審議とモニタリングを行う。
|
社長執行役員、執行役員、本部長、社長執行役員が指名する部署の長 |
年2回 |
| 環境委員会 |
環境目的および目標の達成度や、外部および内部監査結果等を報告し、マネジメントシステムの適切性、妥当性、有効性を確認する。 |
環境統括責任者、環境管理責任者、環境推進部、環境高負荷部署 |
年2回 |
| 気候変動対策分科会 |
サステナビリティ委員会および環境委員会で決定した方針に基づき、分科会に選出された部署がGHG排出量削減活動計画および実績の報告を行う。 |
環境担当執行役員、環境推進部、気候関連高負荷部署 |
年2回 |
気候関連の投資
KOKUSAI ELECTRICグループでは、事業活動によって直接的及び間接的に生じる環境負荷を抑制するための活動や、自社製品の環境負荷低減を促進するための研究·開発に積極的に投資することで、環境保護と気候変動の抑制に努めています。過去の気候関連の投資状況は当社ウェブサイトで開示しております。
気候変動対応と役員報酬との連動
KOKUSAI ELECTRICグループでは、役員報酬における個人業績評価にESG項目の目標達成度を取り入れることで、経営層が主体となって気候変動対応に取り組む体制を構築しています。
戦略
将来の時間軸において、気候変動により将来発生が予想されるリスクと機会を以下のシナリオを分析することで特定しました。
| 参照シナリオ |
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第6次評価報告書のSSP1-1.9、SSP5-8.5、国際エネルギー機関(IEA) :WEO2020、 NZE 2050 |
|---|---|
| 検討温度シナリオ |
1.5℃シナリオと4℃シナリオ |
| 分析範囲 |
当社グループ全体と上流・下流を含むバリューチェーン全体 |
| 時間軸 |
短期:2030年、中期:2040年、長期:2050年 |
| 区分 |
想定される将来の状況と当社グループが受ける影響 |
|---|---|
| 1.5℃シナリオ |
|
| 4℃シナリオ |
|
気候変動がもたらすリスクと機会の特定プロセス
気候変動がもたらす影響に対応するために2種類の気候変動シナリオを分析し、気候関連のリスク及び機会を特定しました。関係部署にて抽出したリスクと機会 計189項⽬について、相互の依存度やその他の影響の⼤きさを評価し、特に影響の大きい11項⽬を特定しました。
その上で対応策と財務影響を⼩〜⼤の3段階で評価しました。
気候変動の主要リスクと対応策
区分:↑利益 ↓支出
影響度:↑小 ↑↑中 ↑↑↑大
| シナリオ | 区分 | カテゴリ | 当社グループのリスク | 発生時期 | リスクが発生するバリューチェーン | 当社グループへの影響 | 財務影響 の評価 | 対応策 ●:実施中 ▲:実施予定 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1.5℃ | 移行 リスク |
法規制 |
|
短期~ 中期 |
上流 直接操業 |
炭素税が導入されることで収益が悪化 | ↓↓ |
● 再生可能エネルギーの導入推進 ▲ 社内カーボンプライシングの導入による、CO₂排出量の削減推進 ▲ サプライチェーンの製造、輸送で使用するエネルギーに対する再生可能エネルギーへの変更要請 |
|
中期 | 直接操業 |
|
↓↓ |
● Scope 1,2:再生可能エネルギーの導入 ● Scope 3 :省エネ製品の開発 |
|||
| 市場 |
|
短期~ ⾧期 |
直接操業 | 開発・製造コストの増加による収益率の悪化 | ↓↓ |
▲ 代替材料適用のための認定評価の促進 ▲ 新規装置開発時の代替材料への適用拡大 |
||
|
中期~ ⾧期 |
直接操業 | 開発・製造コストの増加による収益率の悪化 | ↓↓ |
● 既存設備の省エネタイプへの更新 ● 業務の効率化による設備稼働時間の短縮 |
|||
| 評価 |
|
短期~ 中期 |
下流 | 各バリューチェーンからの環境課題に関する要望・要請への対応 が遅れ、お客様からの評価が低下 |
↓ |
● 国際的なコンソーシアムに積極的に参画して、社内外に当社グループの環境への取り組みをアピール ● ESG経営(環境施策)にリソースを投入し、お客様およびステークホルダーへの開示情報を拡大 |
||
|
短期~ 中期 |
直接操業 下流 |
|
↓↓↓ |
● ビジネスパートナーとの連携強化による省エネ技術の開発 ● 自社製品に対する環境性能認定制度の促進 |
|||
| 1.5℃ | 物理的 リスク |
慢性 |
|
中期~ ⾧期 |
直接操業 | 電力使用量が増大することで、開発・製造コストの増大、利益の 減少を招く |
↓ | ● 省エネ空調機器への変更促進 ● 再生可能エネルギーの購入および太陽光発電システムの増設 |
| 4℃ | 急性 |
|
短期~ ⾧期 |
全て | 自然災害発生による、建物破損・ 従業員被災・通勤不可・部品調達の停止等で事業所の稼働が停止 |
↓↓↓ | ▲ 異常気象におけるBCP対策の抽出(生産拠点の複数化/原材料の調達先の多様化など) ▲ 異常災害におけるBCP対策の早期実現(洪水および大雪災害時の行動指針策定/調達リスク最小化のための調達戦略策定など) |
気候変動の主要機会と対応策
区分:↑利益 ↓支出
影響度:↑小 ↑↑中 ↑↑↑大
| シナリオ | 区分 | カテゴリ | 当社グループの機会 | 発生時期 | 機会が発生するバリューチェーン | 当社グループへの影響 | 財務影響 の評価 | 対応策 ●:実施中 ▲:実施予定 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1.5℃ | 機会 | 市場 |
|
中期~ ⾧期 |
上流 | ビジネスパートナーの環境技術レベルが向上する | ↑ | ▲ 新規参入者とのアライアンス、M&Aなどの連携強化による新技術の取り込み |
| 製品/サービス |
|
短期~ ⾧期 |
下流 | 省エネ技術を適用した製品の開発が促進され、売上が増加する | ↑↑↑ | ● 省エネ性能、再生材料使用率が高い環境適合製品の研究開発推進 ● 競合他社比較で優れた省エネ機能を持つ高付加価値製品を開発し売上拡大を図る |
||
| 4℃ | レジリエンス |
|
短期~ ⾧期 |
下流 | お客様からBCP対策のため、自動化性能に優れた半導体製造装置のニーズが高まる | ↑↑↑ | ● 災害時でもお客様の工程において、少人数でオペレーションできるよう、自動化性能に優れた半導体製造装置を開発 |
気候関連のリスクと機会の分析
リスク分析とレジリエンス評価
気候変動対策が強化された脱炭素社会においては、移行リスクとして炭素税の導⼊、法改正によるCO₂排出規制、エネルギーコスト上昇による⾦属材料費の⾼騰、お客様からの情報開示要求の拡大などが起きると考えています。
この内、炭素税とCO₂排出規制への対策としては、再⽣可能エネルギーの導⼊促進、部品調達や製品輸送方法の⾒直し、当社製品の省エネ性能を継続的に向上させていくことで当社の温室効果ガスの排出量削減に取り組んでいます。さらにお客様からの情報開示要求の拡大に対しては国際的な環境コンソーシアムに積極的に参画し、常に最新のガイドラインに則って環境関連の開示情報をアップデートしています。これらの対策を当社では計画的に推進していることから、一定のレジリエンスを備えていると考えています。
一方、物理的リスクとしては、異常気象や自然災害を想定し、その対策として省エネ空調機器への更新、水リサイクルシステムの更新、⽣産拠点の分散化、原材料の調達先の多様化および災害時の⾏動指針策定などを推進していることから、同様に一定のレジリエンスを確保していると考えています。
機会の分析と展望
気候変動対策が強化された脱炭素社会においては、低炭素製品や省エネ機器を開発する新規参⼊者が増加し、アライアンス、M&Aなどの連携が強化されると考えました。更に、お客様の低炭素製品や再⽣材料へのニーズが⾼まると予想されるため、これらの環境性能を高めた環境適合製品の開発、販売を推進していきます。
また、気候変動に伴う物理的リスクとして、海面上昇による生産拠点の移転や、気候変動による感染症の増加により、製造業全体で人員の確保が困難になれば省⼈化や⾃動化が加速するほか、気候変動予測や自然環境の監視など様々な分野でAI需要が高まることから、半導体デバイスの需要が増加すると予測されます。
こうしたニーズに応えるために省エネ性能や自動化性能に優れた半導体製造装置の市場提供を推進していきます。
リスク管理
KOKUSAI ELECTRICグループでは、事業運営にインパクトが⼤きいリスク要因を抽出し、対策を検討しています。
気候変動による緊急性のあるリスクと、将来起こりうるリスク要因の分析・評価を⾏い、リスクを軽減する施策を決定し、事業計画に組み込んでいます。
特に重要と認識したリスクの場合は、関連部署でプロジェクトを⽴ち上げ、早期対応を進めています。
指標と目標
KOKUSAI ELECTRICグループは、省エネルギーと再⽣可能エネルギーの導⼊を推進するほか、環境負荷低減に優れた製品を環境適合製品に認定する制度を運⽤し、今後も社会における温室効果ガス(以下、「GHG])の排出削減に貢献 するために以下の⽬標を達成します。
2024年3月に「Science Based Targets initiative (SBTi)」※1より、GHG排出量削減目標が科学的根拠に基づいた目標であると認められ、SBT認定※2を取得しました。
2025年4月に「RE100」※3へ参画し、事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーに転換することをめざします。
| 指標 |
目標 |
|
|---|---|---|
| ① |
⾃社が使⽤するエネルギー起因のGHG排出量の削減 |
2030年度までにGHG排出量を50%削減 |
| ② |
販売する製品の使用によるGHG排出量の削減 |
2030年度までにウェーハ1枚あたりのGHG排出量を52%削減 |
| ③ |
⾃社が使⽤する電力の再生可能エネルギー比率の拡大 |
2030年度までに事業所で使用する電力を100%再生可能エネルギーに転換する。 |
- ※1
-
企業に対して科学的根拠に基づいたGHGの排出削減目標の設定を推進している国際的なイニシアティブ。
- ※2
-
パリ協定が求める⽔準と整合した、5年〜10年先を⽬標年として企業が設定するGHG排出削減⽬標。
- ※3
-
事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーに転換することをめざす国際的なイニシアティブ。
各GHGの排出量と目標の達成状況は当社ウェブサイトで開示しております。