社長対談 スプツニ子!さんと語るEquity(公平性)

Equity(公平性)~発信する勇気、受け入れる組織風土~

KOKUSAI ELECTRICは、Equity(公平性)を意識することで、偏りなく優秀な人財を採用・登用し全ての社員が活躍でき、働き続けられる環境整備に取り組んでいます。今回、「世界女性デー」を迎えるにあたり、2025年3月7日にスプツニ子!さんをお迎えし、講演会を開催しました。前半では、「組織の多様性はなぜ重要か、Equity(公平性)を理解する」という内容でご講演いただきました。後半では代表取締役 社長執行役員の塚田とスプツニ子!さんとの対談を行い、「技術と対話で未来をつくる」会社にしていくための想いなどについて、お話しいただきました。

ご講演の要旨

・多様性(Diversity)の意義と組織における効果
・Equity(公平性)の理解が重要
・社会や組織のシステムが一部の人にとって不利な状態を生み出す「構造的な差別」について
・昭和の働き方と令和の働き方の違い。長時間残業が前提の組織では、これからは優秀な人財は確保できない
・女性のロールモデルの少なさや、自己評価における性差のデータを踏まえた上での構造的差別解決へのアプローチ     

社会に根強く残るアンコンシャス・バイアス(無自覚の偏見)

塚田:スプツニ子!さんの講演で、「アンコンシャス・バイアス(無自覚の偏見)」というのが、気になりました。無自覚だからこそ、残酷というか。意識して意地悪をしているのであれば、注意することで変化すると思うのですが、無自覚ゆえになかなか変化しにくいところが難しいなと感じました。

スプツニ子!:おっしゃる通りです。例えば、男性に対しては「男なのに育休取るのか、出世したくないのか」、女性に対しては「あなたはお母さんだから、もう仕事はほどほどにね」などの決めつけは社会に未だに根強く存在します。令和の時代では、専業主婦世帯がすごく少なくなり、夫婦で家事・育児を分担してがんばっている20・30歳代が増えているので、昭和の働き方のデザインでは、男女ともに疲弊してしまうんですね。
これをどのように変えていくかというのが大事かと思いますが、「そういった事情に気が付けるように努力をしよう」という姿勢があるだけで会社の雰囲気が変わり、当事者も意見を発信しやすくなるかと思います。男女ともに子育て中の社員は、「実はこういう部分がやりづらい」という思いがあると思うんですね。私自身、上の世代の男性の同僚が多く、保育園のお迎えと会議の時間が重なってしまった時に、とても言いづらい気持ちがあったのですが、勇気を持って発信したら気が付いてもらえた経験があります。

塚田:なるほど。勇気を持って発信してくれた際の反応も考えなくてはいけないですね。言いたくても言えない気持ちもあると思うので。

スプツニ子!:組織でいろいろな働き方を見直していく中で、意見が出てきた時に「言ってくれてありがとう」というスタンスが大事かと思います。DE&I推進に限らず、社内の心理的安全性を高める上で、何か意見をお互いに言い合う際に有効な心がけかと思います。

時代の変化と働き方

塚田:私は昭和生まれで、昭和の働き方も経験したのですが、当時はそれが最適解ではあったものの、そこからは大きく世の中が変わっていく中で、すでに過去と同じ方法を取るだけではダメだと思い、頭を柔らかくして考えることが必要だと考えています。

スプツニ子!:やはり人って成功体験があると、そこをベースに考えてしまうものなので、難しいことも多いですよね。私は子どもが生まれてから、変化があり、限られた時間で仕事をこなすための効率性が非常に上がりました。意識して生成AIなどのデジタルツールを使いこなすようになったんですよね。子どもが生まれる前は、好きな時間に働けていたものの、ダラダラ仕事していたということに気が付きました。

塚田:半導体製造装置専業メーカーとしては、そういったテクノロジーの発展に多少なりとも貢献していると思うと嬉しいです。また、社内では専用の生成AIツールを開発・導入しております。各部署で業務効率が大きく向上しているデータも出ており、活用方法の社内教育を通じて全社内への浸透を図っています。今後ますます少子高齢化が進み、仕事と生活を両立していく必要が生じる中で、こういった働き方の効率向上も重要だと考えています。

スプツニ子!:日本の企業でDXが思うように進まないと言われている理由の一つは、もしかして、長く働くことに対するペナルティーが少ないからなんじゃないかとも思いましたね。短い時間で働いて、生産性を上げるためには、AIもDXもやるしかないと思っています。

塚田:そのような側面もあるかもしれません。追い込まれると仕事の進め方に変化が生まれ、より効率化を図ろうという意識が高まりますよね。ただ、日本の企業では長く働くことで評価される意識が未だに残っているように感じます。
今般、当社では上記の「長く働くことで評価される」という意識を払しょくすることも視野に、社内の表彰の見直しを行いました。「他の社員の模範となる具体例」を示すことで会社の方向性や価値観の共有・浸透を図っています。例えば、「チャレンジ」を評価する会社の姿勢を伝えることで、現状に甘んじず挑戦を重ねる社員に報い、新たなチャレンジを推奨していきたいと考えています。
私自身としても、「イノベーション」を重要なテーマとして掲げております。社員の皆さんにはこれまでのやり方に固執せず、新しい視点で新しいやり方にチャレンジし、新たな付加価値を創造したり効率向上したりすることを推奨していきたいと考えています。

イクオリティ(平等)とエクイティ(公平)について

塚田:Equity(公平性)を考える時に、そのベースにあるのは、「みんな違うんだ」というダイバーシティが前提としてあるのだと感じました。会社の中だけで見ても、18歳~65歳くらいまでの幅広い年齢や、性別の違い、病気の有無など、自分とは違う人が集まっているところで、全く同じルールを全員に適用して、みんなが公平感を持ってできるかっていうと、なかなか難しいものですよね。

スプツニ子!:その通りですよね。それぞれ全然違う悩みや課題を抱えています。介護で悩んでいるかもしれないし、子どもが不登校かもしれない、病気があるかもしれない。Equity(公平)では、みんな一律同じというEquality(平等)の考え方でなく、それぞれの課題に合った応援や支援が必要かと思います。

塚田:やはり特定の属性で固まると、思考の方向が一つになってしまって、柔軟性に欠けると思います。多様な場面に対応していくには、柔軟性がすごく大事。その柔軟性をつくっていくためにもさまざまな特性を持った人が集まることが重要なのだろうとあらためて思いました。
当社でも、もう少し年齢、役職、性別など関係なく、ざっくばらんに話ができる場面をつくりたいと思っています。また、私自身もいろいろな社員と仕事のことに限らずいろいろな話をし、対話を促進させていきたいです。各職場の心理的安全性を高めることで、多様な人財が「いる」だけではなく、それぞれが「自分らしく」「自分の意見を言える」会社にして、その力をイノベーションの源泉としていきたいと考えています。

スプツニ子!

アーティスト、株式会社Cradle 代表取締役社長

MITメディアラボ助教授、東京大学大学院特任准教授を経て、現在、東京藝術大学美術学部デザイン科准教授。2019年よりTEDフェロー、2017年世界経済フォーラム「ヤング・グローバル・リーダー」選出。第11回「ロレアル‐ユネスコ女性科学者 日本特別賞」、「Vogue Woman of the Year」、「世界が尊敬する日本人100」選出、「G1新世代リーダー・アワード2023」等受賞。2019年、株式会社Cradleを設立、代表取締役社長就任。

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