お客さまとのグッド・リレーションが独創技術を育む

お客さまとのグッド・リレーションが独創技術を育む お客さまとのグッド・リレーションが独創技術を育む 好奇心と向上心を持って絶えず勉強を。 そして、信頼を築くコミュニケーション力を鍛えよう。
好奇心と向上心を持って絶えず勉強を。そして、信頼を築くコミュニケーション力を鍛えよう。

  • 中曽根暁子 Special Medico 代表取締役CEO 中曽根暁子 Special Medico 代表取締役CEO 中曽根暁子 Special Medico 代表取締役CEO 中曽根暁子 Special Medico 代表取締役CEO
  • 柳川 秀宏 KOKUSAI ELECTRIC 常務執行役員 事業戦略本部長 柳川 秀宏 KOKUSAI ELECTRIC 常務執行役員 事業戦略本部長 柳川 秀宏 KOKUSAI ELECTRIC 常務執行役員 事業戦略本部長 柳川 秀宏 KOKUSAI ELECTRIC 常務執行役員 事業戦略本部長

DX(デジタルトランスフォーメーション)が、産業や社会、生活に大きなインパクトを与えています。一方、DX化が進めば進むほど、人のぬくもりが感じられるコミュニケーションが価値を増す時代とも言われます。そのような転換期にあってビジネスチャンスを広げ、付加価値の高い技術やサービスを生み出すキーは何か。AIを活用した医師のマッチングのほか、関連する情報サービスで15件の特許を持つSpecial Medico代表取締役CEOの中曽根 暁子氏と、KOKUSAI ELECTRIC常務執行役員の柳川 秀宏が対談した。

AIを使い医師紹介を迅速にマッチング

AIを使い医師紹介を迅速にマッチングすることについて対談する中曽根さん

柳川中曽根さんは2012年に起業され、昨年、日本商工会議所と全国商工会議所女性会連合会が主催する「第20回女性起業家大賞」で最優秀賞に選ばれました。女性の視点で革新的、創造的なビジネスを実践していることへの高い評価の表れですが、どんな業務をされているのかをまずご紹介ください。

中曽根受賞は思いもよらないことで、自分自身が一番驚きました。当社は健康診断や産業医に特化した医師の紹介事業をメインにし、それに付随して医療情報や人材管理システムを自社開発しています。「医療と人との懸け橋」を企業理念とし、独自のIT技術を活用してベストなマッチングを心がけるだけでなく、そこから始まるおつき合いを大切にして、現場が抱えるいろんな問題を解決するお手伝いを続けてきたことが、今日につながっていると感じています。

柳川AIを使ったマッチングとは具体的にどう行うのですか。

中曽根従来は、コーディネーターが依頼先の病院や企業と医師の双方の条件や診療科、経験値などを総合的に判断して紹介するやり方が一般的でした。これでは、コーディネーター一人で対応できる件数が限られる上、仮にコーディネーターが辞めた場合、依頼先や医師との関係を一から作り直さなければいけませんでした。

柳川紹介件数を物理的に増やすこともそうですが、関係の再構築にかかる膨大な時間とコストを、AIを使ってマッチングすることで解決したわけですね。

中曽根はい。コーディネーターが業務で蓄積した多岐にわたる属人的なデータを分析し、深層学習させたAIが自動的にマッチングを行います。これにより、通常2~3日かかっていたものが、2~3時間で済むようになりました。紹介業は競争相手が多く、しかも後発のハンディがありましたが、当社は大手があまりやらない単発的な健康診断などの医師紹介に加えて、マッチング後のアフターフォローに力を入れてきたことで、クライアントや医師からの信頼がいただけていると思います。

柳川デジタルとアナログの長所を伸ばし合い、業績を拡大されてきたことが分かりました。私が入社以来、設計畑を歩んできて感じるのは、難しい問題は一人で抱え込まず、周りの人に意見を求めるほうが早く解決できるということです。そのためには、普段からのコミュニケーションが大切で、相手との距離を縮める努力が必要です。

フランクな歓談から親近感が深まる

フランクな歓談から親近感が深まることについて対談する柳川さん

中曽根同感です。KOKUSAI ELECTRIC社さんの製品は、世界シェア上位の多くの半導体メーカーで活躍していますね。お客さまとのコミュニケーションはいかがですか。

柳川お客さまは欧米からアジア各国へと広がっており、それに合わせてサービス拠点も世界展開しています。韓国にも設計、生産を行う子会社があり、2015年から2年間、出向しました。現地の社員やお客さまと良好な関係を築く上で、とても効果的だったのが会食でした。宴席の時間を一緒に過ごし、仕事を離れてフランクに歓談することで自然と親近感が深まっていきます。「デジタル時代に」と笑われそうですが、これがないと本音の議論になかなか進めません。

中曽根トラブルの対応でも、日頃の信頼関係が絶対に物を言いますよね。

柳川それは国境を越えた普遍的なことだと実感します。当社の製品はお客さまのカスタマイズが入り、使い方もお客さまごとで多種多様です。このため、トラブルや改善の要望は宿命的なものです。そのような時は必ず現場へ行って状況を調べ、お客さまの要望に真摯に耳を傾けます。「改善します」と言うだけでは信じてもらえないので、説明のロジックも組み立て、その通り改善することで信頼が得られます。それを地道に実践する中で、新しい技術開発のヒントを見つけることも珍しくありません。Special Medico社さんでは、どのようにして技術開発を行っていますか。

中曽根ハードではなく情報系のシステム開発です。何を開発するかはお客さまとの接点である企画部門が担当し、そのテーマに関してどんな特許があるかを事前に弁理士が調べ、毎月開く開発検討会議にも参加してもらいます。会議には開発部隊からデータサイエンティスト、システムエンジニアが参加し、開発テーマのどこで当社オリジナルの技術が組み込めるかを精査しながら進めるスタイルを取っています。その結果として、特許が後からついてくるというイメージです。

柳川当社の場合、半導体という決まった土俵があり、その中で成膜方法や膜の質向上を図る技術等の観点からの特許を積み上げてきました。御社が取得された15件の特許を拝見すると、「街蛍」をはじめ非アプリ化の意識が強いように感じますが、その理由は何でしょうか。

中曽根多忙な業務に追われる医師や病院の立場に立つと、多数のアプリをいちいちダウンロードや更新したり、アプリを使って情報を得たりするのは、煩雑でしかありません。当社の開発コンセプトは、「アプリでお客さまを囲い込むより、どうやったら現場で使いやすいか」です。例えば、URLを使ったメッセージ通知方法として2017年に特許を取った「遠鏡」は、URLタップで簡単にWeb会議やWeb相談などにアクセスできるサービスです。医療現場でも、コロナ禍を機にオンラインでの会議や健康相談などが急増し、便利で使いやすいと好評をいただいています。

柳川Special Medico社さんの開発は、お客さまの多様なニーズに対して何ができるかがスタート地点なので、当社と比較して自由度が広いですね。ただ、私たちも、もっとお客さまニーズからの視点と発想を深掘りしなければならないと痛感しました。そして、その前提となるお客さまとのグッド・リレーションを、いかに進化させるかを深く考えたいと思います。

率先垂範で上司が勉強の大切さ示す

率先垂範で上司が勉強の大切さ示すことについて対談する柳川さん

柳川企業経営にとって人財は最も重要なリソースと言えます。どのような教育をされていますか。

中曽根基本は「人との関係性を大切にする」です。その上で、自分の頭でしっかり考えて判断し、行動できる人になってほしいですし、会社が成長をサポートすると言ってもすべてできるものではないので、自分で成長する力もつけていってほしいと願っています。

柳川私が若い社員によく話すのは、「とにかく勉強を」です。そのためには向上心と好奇心を持ち続ける必要がありますし、自分の専門以外のことにも目を向けてほしい。それが広い教養や視野を養うことにつながるからです。

中曽根勉強は本当に大切だと思います。当社では、その範を上司が示す社風があり、私も現在、通信制の放送大学で心理学を学んでいます。ほかに、大学院に通う者や修了した役員もいます。そういう姿を社員に見せ、「今こんな勉強をし、こういうことが楽しいんだよ」と話しかけると、社員も「自分も何か学んでみたい」と思い始めてくれるんですね。何をしたらいいか分からない社員には、面談をして学ぶきっかけ作りの背中を押してあげています。

柳川韓国にいた時、韓国語教室に通いました。文字が読めないと普段の生活に不便でしたし、一般社員との意思疎通を良くしたいと思ったからです。土日に時間があったので、土曜日に授業を3時間みっちり受け、日曜日は次回に向けて予習をしました。なかなか流暢には話せませんでしたが、2年間勉強したことは大きな財産となりました。

中曽根新しい知識にふれることの喜びが身につけば、それが良い習慣になり、人生まで変えてくれる気がします。

柳川学べば学ぶほど自分が物を知らないことに気づけ、謙虚な人間性も備わります。ところで、当社にはエンジニアが450名ほどいますが、女性は一桁にとどまっています。女性が働きやすい職場作りのヒントがあればぜひお願いします。

男性社員も遠慮なく取得できる環境へ

男性社員も遠慮なく取得できる環境について対談する中曽根さん

中曽根当社も女性は案外少なく、11名中2名です。私の経験を振り返ると、子どもの通う保育所や学校と家庭を結ぶ窓口は「母親」が当然視され、どんなに忙しくてもその連絡や要件に対応しなければならない雰囲気があり、仕事との両立で大変な思いをしました。今の若い世代は「家事や育児は男女の共同作業」という意識に変わってきていますが、企業側もそれをよく理解して働きやすい環境を作ることが重要でしょう。

柳川当社でも管理職の女性社員が少ないのは、仕事と家庭の両立への不安が影響しているのかもしれません。育児休暇や介護休暇といった制度面だけでは不十分で、男性社員でも遠慮なく取得できる空気が社内にないと、実効性が上がらないでしょう。会社として、もっと頑張っていかなければならない点だと思っています。

中曽根もちろん、女性も「自分たちが活躍できるようにしてください」と言うだけでなく、自身も変わっていく意識と行動が問われますね。コロナ禍でテレワークやオンライン会議が一般化し、フレックスな勤務体系が増えたように思いますが、いかがですか。

柳川当社の場合、在宅勤務を隔週交代で暫定的に導入しています。管理セクションはそれで回るのですが、製造セクションは難しいのが現実です。一度、富山事業所でテレワークを試行したところ、1000名ほどの社員で可能だったのは20%ほどでした。所属するセクションでテレワークの可否が分かれると、どうしても不公平感が生まれます。なかなか難しいのですが、何とかしてこの問題をブレークスルーしていきたいですね。

中曽根社員一人ひとりの仕事を“見える化”し、業務の評価もきちんとできるようにしておけば、ある社員が急に休んだとしても業務を代替することは可能だと思います。製造セクションの場合は、どこまで機械化、自動化を進められるかもカギかもしれませんね。

医療DX化に対応するサービスを推進

医療DX化に対応するサービスを推進することについて対談する柳川さん

中曽根柳川さんは昨年4月、事業戦略本部長に就任され、新たな事業開拓の司令塔ですが、まず半導体市場の見通しから聞かせてください。

柳川世界的な半導体不足で、自動車産業をはじめ多くの産業に悪影響が出ています。半導体の生産体制を増強するには必然的に製造装置が欠かせませんが、われわれ供給サイドも部品調達のサプライチェーンがかなり寸断され、オーダーへの対応に正直苦労している現状です。

中曽根そうでしたか。医療業界では、画像診断へのAI導入や遠隔診療、手術支援ロボットの導入などDX化が急速に進んでいます。どれひとつ取っても半導体なしでは成り立ちませんので、KOKUSAI ELECTRIC社さんには本当に頑張ってほしいと思います。私たちも医療のDX化に合わせて、新たな問題を解決するシステム開発を絶えず行っていかなければなりません。先ほど紹介した「遠鏡」の開発コンセプトも、医師不足に悩む僻地医療でますます重要度が増す遠隔診療を、いかにスムーズにサポートできるかでした。

柳川半導体市場は今後も拡大を続け、成長率は年約10%と予想されています。ライバルとの激しい競争は避けられませんが、ここが当社の主戦場であることは、おそらくこれからも変わらないでしょう。現在、主力の成膜装置に加え、膜の品質を向上させるトリートメント装置の開発、販売にも力を入れています。ただ、リスク分散の観点からも、もっとすそ野を広げないと駄目だと思っています。例えば、これまで培ってきた技術を半導体以外の分野にも生かし、事業の多角化を図っていきたいと考えています。

失敗してもチャレンジたたえる企業文化を

失敗してもチャレンジたたえる企業文化について対談する中曽根さん

中曽根当社の場合、医療業界向けに開発したシステムを、他の業界にも応用することはそう難しくありませんし、一部は既に展開しています。しかし、企業理念の「医療と人との懸け橋」に強いこだわりを持っています。今取り組んでいるのは、障がいのある方が誰かに手を差し伸べられなくても自立して暮らしていける社会に向けて、その実現を医療分野の就労で手助けできるシステム作りです。ドクターや医療機関のアドバイスもいただきながら進めています。

柳川半導体製造装置にしても、成膜技術は結構、属人的な経験や勘が物を言う世界です。これをデータ化してAIに深層学習させ、どんな条件下でも高品質の膜が得られるようにできれば、お客さまの要求に合わせた最適な膜を簡便に作ることができるのですが。

中曽根システム開発にあたり、データベースを設計するデータサイエンティストの存在が、やはり欠かせないでしょう。パラメーターが当社より複雑で大変でしょうけど、解決の道は必ずあると思います。

柳川挑戦には試行錯誤がつきものです。チャレンジの結果、失敗したとしても責めず、むしろチャレンジしたことを評価する企業文化を育てていかないと、新しいビジネスの芽も優秀な人財も育ってこないでしょう。

中曽根おっしゃる通りですね。チャレンジの方向性として、「何がいいか」「何をすれば喜ばれるか」は、お客さまが自然と教えてくれます。この「教えてくれる」関係をより良く、より太くするために、これからも誠心誠意やっていきたいと思っています。

柳川今日はビジネスや技術開発の原点に改めて立ち戻ることができました。ありがとうございました。

PROFILEプロフィール

  • 中曽根 暁子KYOKO NAKASONE
    中曽根さんのプロフィール

    1974年三重県生まれ。99年夫の海外勤務に伴い銀行を退社、帰国後、東京アナウンスアカデミー入学。司会業、人材派遣業を経て、2012年12月(株)Special Medico設立、代表取締役に就任。ブライダルコンサルタント1級、職業紹介士の資格を持ち、コミュニケーションを深めるため心理学をはじめ手話・バルーンアート・マジックなど幅広く勉強している。

  • 柳川 秀宏HIDEHIRO YANAGAWA
    柳川さんのプロフィール

    1965年東京都生まれ。88年国際電気(株)(現(株)KOKUSAI ELECTRIC)入社、機械設計者として設計・開発に従事。2013年品質保証部長、15年海外グループ会社(韓国)出向、17年量産設計本部長、18年執行役員生産統括本部長兼量産設計本部長兼富山事業所長、21年4月から現職。