未来をつくるイノベーター対談

未来をつくるイノベーター対談 未知の領域へ踏み出すことを面白がる。 そこからイノベーションは創まれる。
未知の領域へ踏み出すことを面白がる。そこからイノベーションは創まれる。

  • 金井 史幸 KOKUSAI ELECTRIC 代表取締役 社長執行役員 金井 史幸 KOKUSAI ELECTRIC 代表取締役 社長執行役員 金井 史幸 KOKUSAI ELECTRIC 代表取締役 社長執行役員
  • 柳澤 大輔 面白法人カヤック 代表取締役CEO 柳澤 大輔 面白法人カヤック 代表取締役CEO 柳澤 大輔 面白法人カヤック 代表取締役CEO

チャレンジ精神がなければ生き残れない時代。そのカギを握るのは、企業規模でも、売上げでもない。時代の変化へ柔軟かつ迅速に対応し、社会に変革をもたらすイノベーターになる必要がある。その暑苦しいまでの渦はどこから生まれるのか。KOKUSAI ELECTRIC社長の金井が、デジタル領域のリーディングカンパニーとして注目を集めるカヤック代表の柳澤氏と語り合った。

「何をする」かでなく「誰とするか」。
面白く働くことに、とことんこだわってきた

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金井カヤックさんと言えば、事業内容の「とにかく面白いものをつくる」に個性のすべてが表れてます。創業から21年が過ぎ、今やコアであるデジタル領域だけでなく、esportsや結婚、不動産、葬儀、移住支援など多彩に展開され、ユニークとしか言いようがない(笑)。

柳澤大学の仲間と3人で起業した時、「何をするか」を一切決めていなかった。「誰とするか」を最優先に、面白く働くことにとことんこだわった結果として、今日、デジタル領域外にも進出しているわけです。

金井そうでしたか。価値観や感覚、ノリの合う仲間とやることが、いかに重要かということですね。

柳澤はい。金井さんのところは半導体製造装置専業メーカーとして、付加価値の高い成膜技術を持ってらっしゃる。僕の専門外なので、成膜について少し教えてくれませんか。

金井成膜の基本は、気相中でガスとガスを反応させ、それを基板に降り積もらせてつくります。近年、半導体デバイスの構造が複雑化していて、それを構成する薄膜に要求される機能が多様化し、一つひとつの膜の均質性も厳しくなっています。例えば穴のある基板だと、表面に降り積もった膜が穴の入り口をふさぎ、中まで均一な膜を張ることができません。要は、不良品が出ちゃうわけですね。

柳澤それをどうブレークスルーするんですか。

金井上から降らせる従来のやり方でなく、基板表面にガスを流し反応させて膜をつくったんです。この技術を磨き育てたことが、わが社の強みかな。これ以外にも、プラズマを使って膜の酸化や窒化を行うなど、熱処理技術みたいなものも手がけています。

天才は必要ない。ブレストで他人の意見に乗っかって
「ジブンゴト化」しよう

柳澤すごいな。そんな技術は、誰か一人の天才がいたほうがうまくいく感じですか。

金井いや、天才は必要ありません。意外に思われるでしょうが、既存の技術と技術のアレンジで解決できることが珍しくありません。ちょっとした気づきなんですね。同僚やクライアントとの打ち合わせの中に、そのきっかけが潜んでいたりします。

柳澤その意見、よく分かります。うちでは、仕事を面白くするために、ブレストを社内文化にしています。ブレストは発散型の発想法ですが、真剣に取り組むことで、おのずと「ジブンゴト化」するマインドが醸成されます。当事者意識を持つことでモチベーションがぐんとあがり、挑戦するアグレッシブな姿勢が生まれます。

金井相乗効果ですね。ブレストのルールをぜひ伺いたい。

柳澤「とにかく数を出す」「人のアイデアに乗っかる」「1時間以上はやらない」です。ちなみにポストイットは一切禁止。これをやると、自分のアイデアに固執し、他人の意見を聞かなくなるからです(笑)。

金井なるほど。わが社でも、特許の想定される新技術開発では必ずブレストをやりますが、まだ「ジブンゴト化」のレベルには達してないなあ。

柳澤「人のアイデアに乗っかる」をやらないと、アイデアを出すのが得意な人だけの会議になっちゃいます。全然出せない人でも、そこから拾うことはできるはず。こうすることで、チームワークも高まるんです。

他流試合を恐れるな。
いつもと違う環境で鍛えられてこそ人は成長する

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金井仕事を面白くする、いいヒントをもらいました。ところで、うちは富山県に製造拠点、海外にもネットワークがあり、本社のある東京にこだわらない主義ですが、カヤックさんも同じですよね。

柳澤2002年から17年間、鎌倉に本社を置いています。「何をするか」「誰とするか」と同じように、「自分がどこで幸せや面白さを感じるか」は働く人にとって大きな要因ではないかと考えています。加えて、地域がより良くなっていく活動をしたら、人生が二倍、三倍に面白く幸せになることを実感できた。一見、企業活動とは無関係に聞こえますが、自分の住む「地域」を「ジブンゴト化」することは、面白く生きるために大切だと思っています。

金井うちは、納入先の半導体メーカーの工場近くにグループ会社を進出させ、自社製品のメンテナンスや営業をしてます。この地の利を活用して、社員を日本からグループ会社に出向させたり、依頼される研究を現地で担当させたりして人財を鍛えています。

柳澤うちの取引先に海外は少ないんですが、エンジニアを能力採用しているので、外国人社員も多いです。

金井近年では、公共の研究機関や部品のサプライヤーにもウイングを広げ、施設内に当社の装置を置いて共同研究を行う取り組みなども増えてます。いわば会社の看板を背負って行き、相手方の要望やクレームの最前線に立つわけです。なので、自分の専門外の勉強もせざるをえないし、責任感が全然違ってきます。

柳澤他流試合でもまれる経験は、人を成長させますよね。

ゼロから一を生み出す苦労を経験すべし。
失敗してこそ伸びしろも大きく育つ

金井ええ、期間はだいたい3年から5年ですが、行く前と後とでは別人みたい。これは、ちょっと大げさか(笑)。ただ、このところ少し気がかりなのは、失敗を恐れるあまり挑戦に消極的な若い人が増えているんじゃないかという点です。

柳澤挑戦に失敗はつきものですよね。わが社は、挑戦したけど撤退したサービスがかなりあります。例えば、2016年に流行した「うんこドリル」より5年も前に出したアプリ「うんこ演算」がそうです。そうした失敗や撤退事例も自社サイトで公開しています。

金井お客様からテーマを与えられ、技術開発するのは意外と楽なんですよね。もう方向性が見えているから。一方、ゼロから一を創(う)み出す苦労は失敗の連続で、ノイローゼになってもおかしくないぐらいつらい。しかし、買ってでもこれを経験しないと、本人も会社の伸びしろも大きくならない。だから、もっともっと挑戦してほしいんです。

半導体の微細加工の未来は手探り状態。
考え方や経験の異なる人財を取りこみたい

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柳澤半導体の将来はどうなんですか。

金井需要はまだまだ増えるけど、技術的にはナノの世界に入り、微細加工が限界を迎えています。最先端は、微細加工したものを高く積んだ3D-NANDフラッシュメモリですが、この先、デバイスがどの方向に行くのかメーカー自身でさえ悩んでいる状態です。

柳澤技術的にある程度、行き着いた感があるという話ですね。

金井カヤックさんを見習って、未知の領域へ踏み出す勇気を面白がる会社にしないと。ひとつは、これまでと異なる考え方や経験を持った人財を求め、サプライヤーなど社外の人とも活発なブレストをやり、クリエイティブなものを生み出したいんです。

柳澤うちはブレスト講習もやりますし、ブレストカードという商品も出していますよ(笑)。

金井お願いにあがるかもしれません(笑)。もうひとつは、世界的に見て製造業を志望するエンジニアが減ってきていて、この先、それをカバーするためのIotやAIの活用が必須になってくる。そういう知識やノウハウのある人財を新たに社内に取りこんで、単に生産性向上だけでなく、新たなモノづくりの事業領域を開拓したいと思ってるんです。

寄らば大樹は禁物。強みを徹底して磨き
異質とのコラボからイノベーションを

金井柳澤さんは「鎌倉資本主義」のネーミングで、地域ならではの資本を重視した持続可能な社会づくりの可能性に挑戦されています。新たな資本主義の形を模索するなんてイノベーションそのものですね。

柳澤従来の価値観によるビジネスは人々を豊かにしてきましたが、ここにきて、世界的な問題である富の格差や環境破壊の問題がいよいよ顕在化してきました。この限界を打ち破るには、「幸せの物差しをGDPだけでなく、人とのつながりや豊かな環境などを取り入れるべきでは」と考えています。事業とは別ですが、鎌倉のまちを面白くするための地域活動も続けています。

金井ここでもブレストが推進動力になってるんですね。

柳澤そうです。僕らは「カマコン」と呼んでますが、楽しいからボランティアであっても多くの方が集まります。全国30箇所以上にこうした取組が広がっています。

金井わが社は2019年7月、アメリカのアプライド・マテリアルズ社と株式譲渡契約を締結したことを発表しました。株式譲渡が完了すると、世界一の半導体製造装置メーカーの一員となり、最先端の技術や情報にふれることで社内にさまざまな化学反応が起きることを期待しているんです。

柳澤それは刺激的ですね。

金井でも、一歩間違えば「寄らば大樹」でしょ(笑)。そうならないためにも、まず自分たちの強みである成膜技術を徹底して磨き、異質なものとのコラボレーションを恐れず他流試合にも積極的に打って出る。それを面白がることから、わが社の未来を切り開くイノベーションが誕生する気がします。今日はありがとうございました。

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PROFILEプロフィール

  • 金井 史幸FUMIYUKI KANAI

    1956年生まれ。慶應義塾大学(院)工学研究科電気工学卒業後、1981年日立製作所入社。2003年ルネサステクノロジ(現ルネサスエレクトロニクス)転籍。2009年日立国際電気入社後、縦型成膜装置設計部長を経て、富山工場長。2018年日立国際電気の半導体製造装置部門が分離・独立し、現在、KOKUSAI ELECTRIC社長。

  • 柳澤 大輔DAISUKE YANASAWA

    1974年香港生まれ。慶応義塾大学環境情報学部卒業後、ソニー・ミュージックエンタテインメントに入社。1998年、学生時代の友人と共に面白法人カヤックを設立。鎌倉に本社を構え、鎌倉からオリジナリティのあるコンテンツをWebサイト、スマートフォンアプリ、ソーシャルゲーム市場に数多く発信し、さまざまなWeb広告賞で審査員を務める。ユニークな人事制度やワークスタイルなど新しい会社のスタイルを発信。2014年に東証マザーズ上場。2018年11月、地域から新たな資本主義を考える『鎌倉資本主義』(プレジデント社)を出版。

    会社プロフィール

    鎌倉に本社を置き、「うんこミュージアム」をはじめとするエンターテイメント、「ぼくらの甲子園!」シリーズなどの自社ゲームアプリ、ゲームコミュニティアプリ「Lobi」など、オリジナリティあるコンテンツを企画。2014年12月東証マザーズ上場。2015年に冒険法人プラコレ、2016年に株式会社ガルチ、2017年に鎌倉R不動産、ウェルプレイドがカヤックグループにジョイン。子会社として、2016年に鎌倉自宅葬儀社、2017年に株式会社カヤックLIVINGを設立。